「Do well by doing good.」の輪を広げていきたい/imperfect佐伯美紗子(後編) 【Cover Story】よりよい世界へ。よりよい社会へ。
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「Do well by doing good.」の輪を広げていきたい/imperfect佐伯美紗子(後編)

令和元年7月、表参道ヒルズにオープンした「imperfect表参道」は、世界の食と農を取り巻く様々な社会課題に対し自分たちで出来ることから少しでも世界と社会をよくしていこうという想いで誕生したマーケット&カフェ。社会的・環境的価値の高い取り組みを通じて生産されたナッツ/スパイス/カカオ/コーヒーなどの素材を掛け合わせ、独自のおいしさを提供してくれます。

前編に続き、「imperfect表参道」を企画・運営している佐伯美紗子さんにオープンまでのご苦労や現在の思い、今後の夢などを語っていただきました。

世界をよくするためにーー。学生時代に描いたビジョン。

DOWELL編集部: 人生を通して実現したいことのために、佐伯さんはどんな未来を描きましたか? どんなことを学んで経験し、努力をされたのでしょうか?

佐伯さん: 社会や経済の仕組みを変えたいという思いがありましたから、大学は経済学を専攻しました。変えたいと思うからには、今の社会や経済がどうなっているのかを理解しないとどう変えるのかが分かりませんし、アプローチもできませんからね。

DOWELL編集部: アメリカでの生活から久しぶりに日本での生活になって、何か見えてきたものがあったのではありませんか?

佐伯さん: そうですね。たしかにいくつか見えました、その中で最も大きかったのは、やはりさっきのボランティアの話のような意識の違いですね。それをものすごく感じました。

DOWELL編集部: 日本とアメリカの両方を経験されたから、世界をよくするためにはどうしたらいいかという視点を持つことができたんでしょうね、きっと。

佐伯さん: そうかもしれません。国は1つではなく繋がっているんだという感覚が、私の中では非常に強かったんです。今、自分が食べているものも日本国内で完結しているものではないということも、自然と理解ができていましたし、そのことを考えますと、子供の頃、私がアメリカで生活していたということは大きいかもしれないですね。

入社後は仕事に食らいついていく毎日

DOWELL編集部: 大学を卒業したら商社に行くというのは決めていたんですか?

佐伯さん: はい。先ほどもお話ししたように、影響の幅の広さと大きさがあって、自分が何かをやりたいと思った時にチャンスがたくさんある企業に入りたいと思っていました。

DOWELL編集部: 佐伯さんは現在大手総合商社にお勤めになられていますが、実際に新卒で仕事を始めた時はどんな感じでしたか?

佐伯さん: 入社してすぐは、配属先の仕事に食らいついていく毎日でした。

その時、今考えると私は恵まれていたなと思えることが2つあって、1つは今、自分が担当している業務が私の5年後、10年後にどんなふうに影響してくるのか、どういう役割があるのかという理解を周りの先輩たちが促してくれたということです。

今自分がやっている仕事と、自分が将来やりたいと思っている仕事とは直接的に結びついてはいないように思えます。でも、今の仕事が積み重なっていくことで、私という人間は、こういう仕事に携われるようになるんだよ、こういう役割を得ることができるんだよと、周りの人たちがしっかり理解させてくれたのです。

DOWELL編集部: それは恵まれていましたね。素晴らしい先輩たちだと思いますよ。その当時、佐伯さんは将来のイメージを持っていて、もちろん、それに近い部署が何かしらあったとは思うんです。でも、最初は仕事の基礎的なことを学ぶことが重要なので、上司や周りの人は佐伯さんの将来のこともちゃんと考えてくれていた、そんなイメージですね。

佐伯さん: 私が恵まれていたと思う理由の2つ目がそこで、こういうことをやりたいと思っていても、自分にはまだそのための能力が足りないことは分かっていました。ですから、そこに向かうためにこういう能力を身につけたいと思っているので、こういう仕事をやらせてほしい、こういう部署に異動させてほしいという私の希望を、周りの人にいつも話していました。それを上司が聞き入れてくださり、チャンスを与えてくれました。

imperfectにジョインするまでの道のり

DOWELL編集部: 夢を実現する上で、その夢を人に語れるかどうかが結構大事だということをよく聞きます。話すタイミングや相手は選ばなくてはなりませんが。

佐伯さん: 思っていることはちゃんと口に出して言わないと誰にも伝わらないですよね。

DOWELL編集部: ご自分で将来のビジョンを持っておられたのは強いですね。

佐伯さん: 入社してからも学生時代からもそうですが、ビジョンを達成する具体的な方法は全く分かりませんでした。

DOWELL編集部: 始めは誰だってそうですよ。最初から分かっていたら逆に怖いです(笑)。

これまでのキャリアを経て、imperfectにジョインされた背景についてお聞かせください。そして、現在どのような思いで従事されていますか?

佐伯さん: imperfectは構想の段階の時に先輩から、今こんなことを考えているんだという話を聞かされて、そんな事業があるのなら、自分も参画したいと希望して異動させてもらいました。

DOWELL編集部: ビジョンを持っていないと、そういったことがあるという情報をキャッチアップできませんし、そのタイミングを逃さずに手を上げることもできません。アンテナがすごいですね。

佐伯さん: 私がこのimperfectの事業に参加していることは、周りの人たちには違和感がなくて、ああ、そうだろうなと思ってくださっていると思います。

DOWELL編集部: 大きい会社になればなるほど、周りの人たちから違和感がないと言われるのは大事ですよね。

農家の方々がいてくださるからこその事業

DOWELL編集部: 実際にimperfectを立ち上げた今、どのように感じていらっしゃいますか?

佐伯さん: 構想からお店を立ち上げるまでに1年半、今、オープンして半年になりました。私はマーケティングやPRを担当させていただいているので、前に立たせていただくことが多いのですが、私がここに来て話すまでに、いろいろな人がいてくださるということをとても強く感じています。

特にこの事業は、農家からこのお店まで一気通貫なので、農家の方々がいてくださるからこそ今の事業が成り立っているということを、より感じやすい環境にあると思います。

私の今の立場から言いますと、農家の方々から始まって、このお店で販売ができるまでに携わった、多くの人の想いをどれだけ最大限に、しかも魅力的に伝えられるかが自分の仕事だと思っていますので、その人たちの力を無駄にしないためにといったら変ですが、どれだけできるかなと思いながらやっています。

DOWELL編集部: 今のお話もとてもいいお話ですね

このチャンスを自分がどれだけものにできるかが大切

佐伯さん: imperfectは立ち上げたばかりで、まだ大きな収益が出る事業ではありません。会社の中で違う部署が生み出したお金を投資してもらっています。そういう立場でもあるので、とても責任感を持って感謝しながらやっています。

DOWELL編集部: 会社は収益をどこかに投資をしないと続きませんし、大きくなっていきません。会社が持続していくためにはあるべき姿と言えるでしょうね。

佐伯さん: とはいえ、責任は重要だと思っています。このチャンスを自分がどれだけものにできるかが大切だと思います。そうはないチャンスなので、全力を尽くしたいと思っています。

お店を立ち上げて嬉しかったエピソード

DOWELL編集部: 佐伯さんにとって、やりがいを感じたことや嬉しかったことなど印象に残っているエピソードについてお聞かせください。

佐伯さん: 嬉しいなと思ったのは、カフェデラス農園の人が来日されて、お店に来てくださったことです。それだけのことでしたが、ただただ純粋に嬉しかったです。

imperfectのお店を通じて、カフェデラスのプロジェクトに取り組んでいますが、本当にその当事者の人が来てくださって、ああ、私たちはこの人たちと一緒にプロジェクトを運営しているんだということを実感しましたね。

彼女たちがこのお店を見て「自分たちの育てたコーヒー豆が、こういう形で消費者の方に提供されて、みんなが自分たちのプロジェクトを大事にしてくれているんだと、すごく嬉しく感じた」と話してくれました。お店をやってよかったなと心の底から思いました。

DOWELL編集部: 他にもありますか?

佐伯さん: お店をオープンするにあたって、最後の最後まで悩んだのが、私たちの取り組みに対してお客様が気兼ねなく参加ができて、継続的に社会的・環境的価値の高い取り組みを行う仕組みは、どのような方法がベストということです。

私たちには、お店に来てくださった方に、こんな課題があるんですよと気づいてほしいという気持ちもありました。でも、文字だけで説明してもそれを読んでくださったお客様に、私たちの想いが伝わるかわかりません。

その一方で、お客様に負担を掛けすぎると、面倒くさいなと思われたり、いい思い出にならずに帰られてしまうという心配がありました。

私たちとしては参加意識を持って自分事に感じてほしいと思って、それにはどういう仕組みを作ったら、自分たちの想いが本当にお客様に伝わるのか、本当に悩みました。

そして、いくつもの試行錯誤の末に今展開している、チップを投票するという仕組みができました。

どのようなことかと言いますと、商品をご購入頂いたお客様に、スタッフから小さなチップが手渡されます。お店に設置されている3つの投票箱にはそれぞれのプロジェクトがあります。

プロジェクトテーマ-1【環境】 2万本の苗で森と生き物の命をまもろう!

プロジェクトテーマ-2【教育】農園の経営を支援してカカオ農家を笑顔に!

プロジェクトテーマ-3【平等】 女性たちの農の学びを支えて平等な社会を!

一番応援したいと思って頂いたプロジェクトを1つ選んで、投票口にチップを入れて頂きます。投票箱が透明なので、今はどのテーマに投票が集まっているのか見ていただくことができます。

今では実際にお店に来てくださった方々が「投票ってすごく興味深くて面白い」と言ってくださるようになりました。とてもありがたいですし、嬉しいことの1つですね。

DOWELL編集部: 無理をしているわけではなく楽しく参加できますし、お客様の想いが詰まったチップが増えていくのを見ると、お店のファンが増えていっているということですね。

佐伯さん: 本当にありがたいですね。

「Do well by doing good.」な仲間を募り、サステナブルな発見や体験がある場づくりをしていきたい。

DOWELL編集部: imperfectの一員として、将来的にどのようなことにチャレンジしたいなど展望がありましたらお教えください。

佐伯さん: imperfectを通じて実現したいことは、「Do well by doing good.」の輪を広げていくことです。

私たちだけでできることは非常に限られているので、この活動に賛同してくださる企業とか、個人で事業をなさっている方とか、仲間をどんどん増やしていきたいと思っています。

その結果、先ほど申し上げた選択肢を広げるということに貢献していきたいです。

DOWELL編集部: お店はどんな場所にしたいですか?

佐伯さん: 私は、このお店をものを買うだけの場所にはしたくなくて、人が集って話をしたり、体験をしたりとか、サステナブルやSDGsも含めて、新しい発見ができる、そういう場所にしていきたいと思っています。

DOWELL編集部: 今日はありがとうございました。

佐伯さん: こちらこそありがとうございました。

Well(よい)消費行動で社会が変わる/imperfect佐伯美紗子(前編)

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