日本でもコーヒーは日常生活に馴染みのある飲み物になっていますが、ブラジルが世界の主要なコーヒー豆の産地であることは知っていても、そのコーヒー豆が誰によって、どのように作られているのかをご存知の方は少ないのではないでしょうか。
宮川直也さんは、コーヒー大国ブラジルでも最大級の農園であり、50年の歴史を持つイパネマ農園で長年コーヒーづくりに携わってこられました。前編に続き、そんな宮川さんにイパネマ農園の様子やこれまでのご経験、コーヒーづくりに賭ける思いなどをお聞きしました。
日本でもコーヒーは日常生活に馴染みのある飲み物になっていますが、ブラジルが世界の主要なコーヒー豆の産地であることは知っていても、そのコーヒー豆が誰によって、どのように作られているのかをご存知の方は少ないのではないでしょうか。
宮川直也さんは、コーヒー大国ブラジルでも最大級の農園であり、50年の歴史を持つイパネマ農園で長年コーヒーづくりに携わってこられました。前編に続き、そんな宮川さんにイパネマ農園の様子やこれまでのご経験、コーヒーづくりに賭ける思いなどをお聞きしました。
DOWELL編集部: 今後、イパネマ農園として取り組んでいきたいプロジェクトは何ですか?
宮川さん: この50年でコーヒーのマーケットも大きく変わってきました。50年前はスペシャリティーコーヒーもまだなかった時代です。そこからスペシャリティーコーヒーマーケットが生まれて、今ではさらにそのワンランクもツーランクも上を行くような、本当のスペシャリティーコーヒーに注目が集まっています。それを私たちはコーヒーマーケットのワイン化ととらえていますが、ワインのように最高級品質のコーヒーのマーケットも生まれつつあります。
もちろん量的にはまだまだ少ないマーケットですが、そのようなマーケットのために最高級のコーヒーを作るプロジェクトを最近立ち上げました。どういうプロジェクトかというと、標高1,000メートル以上の生産区画で育てたコーヒーを、こだわりを持った方法で収穫するタイミングを考えて、あるいは、収穫した後のコーヒーの精製、選別、乾燥を工夫して特徴のある味わいのコーヒーを作る、というプロジェクトです。
DOWELL編集部: ここ最近、コーヒー関係の取材が増えてきて、いろいろな方にお話をお聞きするのですが、コーヒーの品質とか作り方、味の楽しみ方とかワインに通じるところがあるなと思っていたのですが、やっぱりそうだったのですね。今のお話で納得しました。
宮川さん: 今までコーヒーを嗜まれてきた方の中に、さらにワンステップ上のいいものを求めたいという方が徐々に増えてきて、そういう方がワイン感覚でコーヒーを飲むようになってきていますね。
今までコーヒーというと、深めの焼きでミルクや砂糖を入れて飲んでいました。一方、ワイン感覚で飲むコーヒーは、コーヒー豆の特徴を最大限に生かすために焼きはそれほど深くせず、さらにはいろいろな方法でコーヒーを抽出して、ミルクや砂糖は入れずにそのままの状態でコーヒー本来の味や香りを楽しむものになっています。飲む前には必ず香りをかいで、そのあと口に含んで味を確かめたりするのはワインと全く同じですね。
DOWELL編集部: 今回、三越逸品会にimperfectが出店されるにあたり、イパネマ農園のコーヒー豆が選ばれました。こちらの豆についてどんな特徴があり、どんな味なのかを教えてください。
宮川さん: B73区画というところで採れた、イエローブルボン種のコーヒーです。チェリーが黄色く熟して最適な状態になった時にハンドピックして、それをナチュラル製法で処理して天日乾燥しました。タンジェリンの風味が特徴のコーヒーと言えますね。
DOWELL編集部: タンジェリン風味というのは、どんな味わいですか?
宮川さん: 柑橘系で、ほどよい酸味のあるコーヒーです。飲んでみましたが、非常にすっきりした感じの爽やかなコーヒーで、とても飲みやすかったですね。
DOWELL編集部: 土壌のミネラル分によっても味は変わってきますよね?
宮川さん: もちろんそうです。同じ品質のコーヒーを植えても、土が違えば味も違ってきますし、標高によっても違ってきます。
DOWELL編集部: いい豆でも抽出の方法によって味が変わってきそうな気がしますが。
宮川さん: コーヒーが難しいのは、原料はいい、焙煎もうまくいった。あとは豆を挽いて淹れるだけとなっても、これによって味が大きく変わってくるからです。
ワイン感覚でコーヒーを楽しむ方の中には、自分でこだわりのコーヒー器具を買って、自分で豆を挽いて、お湯の温度ももちろん管理して時間を測って抽出するとかそこまで凝る人もいますからね。
DOWELL編集部: コーヒーはまさに最高の嗜好品といってもいいでしょうね。読者の皆さんにもそこまでこだわってほしいですね。
DOWELLの読者にもコーヒーを飲む人がたくさんいると思いますが、そうした人に向けてメッセージをお願いします。
宮川さん: イパネマ農園が今回ご提供するB73は、地球の裏側のブラジルで大切に育てられて、一粒一粒丁寧に精製し選別した私たちイパネマ農園の自信作なので、ぜひ皆さんにもじっくり味わっていただきたいです。
DOWELL編集部: それでは最後の質問です。「Do well by doing good.」という英語の言葉がありまして、DOWELLマガジンはこの言葉を大切にしています。それは「よいことをして、世界と社会をよくしていこう」というサイクルを指す意味になのですが、宮川さん、ボルジェスさん、プラドさんにとっての「世界をよくする、よいこと」とは何でしょうか?
宮川さん: コーヒー生産者、農家、自然を扱ってモノづくりをする立場の人間にとって、人類みんなのものである地球、自然を大事にしながらモノづくりをしていくのが農家の責任なのではないでしょうか。ただ単にモノづくりをするのではなく、皆さんが住んでいる地球の環境を守ること、これがいちばん大事な使命ではないかと思っています。
ボルジェスさん: 自然の保護、これは非常に重要な要素で、私たちも在来種の木を植えて水源を守ったりした結果、湧き水の量が増えたという実績があります。自然環境を守ることはとても大事ですし、働いている人間にとってもモチベーションが上がります。
さらに付け加えたいのが、モノづくりへのこだわりです。いいコーヒーを作るにあたって、1つ1つの小さなことが決め手になってきます。
プラドさん: 自然へのこだわりというのは、非常に大事です。さらに今回提供するコーヒーの話でいえば、私たちの作ったコーヒーをお客様に飲んでもらえることで、生産者と消費者の距離がぐっと近くなりました。
このことはコーヒー生産者、イパネマ農園で働く従業員にとって非常に励みになります。自分たちの作ったコーヒーが、最終的にどうなったのかが分からないということではなくて、自分たちの作ったものがファイナルバイヤーに渡って飲んでいただけて、コンシューマーの顔が見えるようになったわけですから。こんなに嬉しいことはありません。来年もさらにいいコーヒーを作りたいと思います。
DOWELL編集部: 今日はどうもありがとうございました。
宮川さん: こちらこそありがとうございました。
いいことをして、この世界をよくしていこう。~ DOWELL(ドゥーウェル)~
www.dowellmag.com