「green bird(グリーンバード)」とは、“きれいな街は、人の心もきれいにする”をコンセプトに街のごみ拾い活動をおこなう団体です。2002年に原宿で生まれ育った数名の青年たちが活動をスタートし、翌年には、この活動をさらに広げるために法人化。現在その活動が日本各地はもちろん、海外まで広がりをみせています。前編に続き、その生い立ちや活動内容、将来のビジョンなどについて、代表を務める福田圭祐(ふくだ・けいすけ)さんにお話を伺いました。
国内80チーム。海外でも10チームが活動中
DOWELL編集部: 国内の参加者は3万3000人にのぼるとお聞きしました。
福田さん: その通りです。現在国内には80のチームが存在しています。原宿表参道の次が下北沢、そして3番目はなぜか大きくとんで福岡。よく聞かれるのですが、私たちはフランチャイズ制度を取っているわけではありません。先にお話したコミュニティーリーダーが存在することがチームに不可欠。リーダーになる条件は、グリーンバードの信念を理解し、面白いアイデアを出して6割の人を振り向かせられる人物であること。あくまで人ありきで、日本各地にバランスよくチームを配置することを優先するという発想はないんですよ。
最近日本では台風をはじめとする自然災害が多いのですが、国内ではリーダーの判断で地元の災害復興に駆けつけているケースも少なくありません。困っている被災地でグリーンビブスが貢献している姿を見ると、とても頼もしく感じますね。
さらに私たちの拠点は国内だけにとどまらず、海外にも10チームあります。実は街の掃除を業者まかせにしていたパリッ子たちが特に盛り上がっているんですよ。8年前にパリ在住の日本人5名のみで発足しましたが、今ではフランス人が9割。“自分の街は自分で掃除する”という日本では当たり前のことを見習って、実践するようになってきたのです。
当初パリでは清掃を生業としている方々がいるので、衝突が起きないかと警戒。彼らが巡回しているところに出くわさないように注意していたそうですが、ある日ばったり。でも「君たちがごみ拾いしてくれていることは知ってる。僕らも楽になって助かってるよ」と笑っていたそうで、フランス人らしいと思いませんか。
またスリランカには、東京の赤坂チームのリーダーが運営する児童養護施設があるのですが、そこでは、授業の一環としてごみ拾いを取り入れています。子どもたちは街をキレイにすることだけでなく、この活動を通じて、ごみの分別を学んでいるのです。またリサイクルの仕組みなどに触れることで、自然を守ることの大切さも知ることができているようです。最近になって、有名な観光地に、分別できるタイプのごみ箱が設置されたというニュースも入ってきました。
DOWELL編集部: 素晴らしい。いかにもラテン民族らしいエピソードですね。ポイ捨てが当たり前のフランス人が、ごみを捨てないようになる日がくるかも知れませんし、アジアでは環境問題教育の役目も果たしているんですね。
日本で初めて、タピオカ専用ごみ箱を設置
DOWELL編集部: 最近、ユニークな取り組みをされているとお聞きしています。
福田さん: まずは「タピオカ専用ボックス」ですね。空前の大ブームとなり、それが一過性ではなくすっかり定着している感のあるタピオカドリンク。私たちの拠点で本部のある原宿表参道エリアでも20を超える専門店が存在しています。
その裏でドリンク容器のポイ捨てが後を絶たず深刻な問題となっています。各店舗ではもちろん回収箱を設置しているのですが、その場で飲み干してボックスに入れていく人は皆無。みなさんテイクアウトして歩きながら楽しまれているので、購入した店舗に戻すのは難しいんですよね。
しかもタピオカドリンクの容器のサイズは通常のドリンクより形状が大きいので、公共のごみ箱に捨てた場合には投入口を塞いでしまい、その周辺にごみがあふれかえるといった問題まで生じています。しかも中身が残ったままだと、ネズミが寄ってきたりして衛生的にも好ましくなく、このままではまずいと。
DOWELL編集部: なるほど。感染症といった病気の心配まででてくるんですね。
福田さん: そうなんですよ。放置しておくわけにいかないと考えてひらめいたのが、どの店舗の容器でも回収する「タピオカ専用ごみ箱」でした。昨年8月から黒糖タピオカ専門店「謝謝珍珠」さんと組んで、原宿のど真ん中に位置するグリーンバードが運営するコミュニティスペース「subaCO」に設置を開始したのです。
この「タピオカ専用ごみ箱」の特徴は、
- どんなブランドのタピオカ容器でも捨てることが可能。
- バケツ&ザルに飲み残しを分別して捨ててから、容器を専用BOXに投入。
- 回収したタピオカ容器1個につき1円を、グリーンバードの活動に寄付。
の大きく3つ。
インスタ映えするようなデザインに仕上げているのは、このごみ箱を利用することがオシャレで、さらにエコにも繋がっているという意識を持っていただければと。
タピオカと時期が重なりますが、もうひとつのトピックスは、昨年の秋に日本全体が“ONE TEAM”で盛り上がったラグビーワールドカップでのプロジェクトです。
DOWELL編集部: そういえば、福田さんは青山学院大学のラグビー部だったんですよね。
福田さん: はい。昨年夏にグリーンバード三代目の代表になって、直後にラグビー関係での活動というのは偶然じゃないですね(苦笑)
正式には「ごみ袋でトライ!プロジェクト」という名称で、試合会場でごみ袋を配布するというものです。実は一昨年8月にワールドカップ12会場で唯一新設された岩手県の「釜石鵜住居復興スタジアム」のこけら落としで、初めてこの取り組みを行ったんです。ラグビーボールの柄をデザインしたごみ袋で、ごみを入れたあと両端を結ぶとラグビーボールになる袋という仕組みですが、これが大変好評で。
観客にごみを集めてもらってポイ捨てをなくし、“みんなできれいなスタジアムをつくろう!”という趣旨に、運営サイドからも賛同いただけ、オフィシャルのボールをかたどったごみ袋もつくることができ、全48試合で、計約70万枚を会場で配布することができました。
今回やってみて、会場での分別が難しく燃えるごみのみの対応だったりなど課題も見つかりました。これらを解消して、次回の2023年のワールドカップに臨むつもりです。
DOWELL編集部: 次回はフランスのパリ。グリーンバードのパリチームが大活躍してくれそうですね。
いつもインタビューの最後には、みなさんにとっての「Do well by doing good.」をお聞きしているのですが、福田さんの場合は現在の活動そのものですね。グリーンバードを将来どのようにしていきたいかというビジョンをお聞かせいただけますか?
福田さん: 法人化されて今年で17年目。グリーンバードの試みを理解してくれる人のおかげで組織はどんどん拡張して、国内外で90チームを擁するまでになりました。ではあと10チーム増やして大台を目指すのかというと、そうは考えてはいません。
このあたりで一度立ち止まって、みんなの気持ちがちゃんとひとつになれているかを確認する作業が必要なのではないかと思うんですね。その上で、これまで実現したかった“ポイ捨てのない社会”という目標をさらに昇華する形で、“ごみ拾いで地域を支える社会”の実現に取り組んでいけたらと。
NPO法人としては、もっと行政と企業のハブとして動いていきたいと考えています。そのためには就職活動のためのボランティアなどだけでなく、実際に働く場として認知していただけるようになりたいですね。グリーンバードでインターンをするとか、企業から出向してきてもらえるとか。新卒でグリーンバードを志望する学生がいる、そんな世の中が来るようにがんばっていこうと思っています。
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