今、世界は新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)のパンデミックに見舞われています。日本でも自粛が要請され、ニュースでは閑散とした都会や観光地がテレビの画面に映し出される日々。生活のペースが急激にスピードダウンし、今まで見えていなかった景色が少し見えてきた気もします。皆さんは、今のことをどのように考えているでしょう。もしかしたら自然環境、そして暮らし方を改めて見つめなおしている人もいるかもしれません。6月は国連が定める環境月間です。環境問題というと壮大すぎて圧倒されるかもしれませんが、問題を個人レベルに引き寄せて考えてみてはいかがでしょう。
環境保護に対する意識が高いドイツ
「環境保護」というと、わたしが思い出すのはドイツの友人たちのこと。ドイツで友人たちと集まるといつもあれこれ議論します。そこで、必ず話題になるのが「エコロジー」。環境のためにできること、していることについて語り合うのです。
たとえば、都心に暮らしていた友人は、子供たちに自然の中で育って欲しいと考え、実際に数年後に郊外へ移住しました。また、ドイツは肉食の国ですが、それが環境に与える負荷が大きいためにベジタリアンになった友人、化粧品は石油を顔にぬっているのと同じようなものだからやめたという友人もいます。こんな風に各々が自分で考えて実行していることを話しているのです。もちろん違う意見も飛び交いますが、そのような会話に刺激されたり、ヒントをもらうことがたくさんあります。
環境政党の誕生
現在、ドイツは環境保護に対する意識が高い国として知られていますが、実は戦後のドイツは違っていました。1970年代のドイツは高度経済成長の真っ只中で、環境が汚染され、ついには森が破壊されはじめました。自分たちを「森の民」と思っていたドイツ人は、そのことでようやく危機感を覚え、これがきっかけで環境保護活動に興味を示す人が増えていったのです。
そして1980年ごろになると社会活動家が集まって『緑の党』という環境政党が誕生し、環境活動が本格化しました。そのころ、私はドイツの祖父母の家に住みながら地元の高校に通っていて、テレビのニュースに映っていた緑の党の政治家に衝撃を受けたことを今でも鮮明に記憶しています。
それというのも、緑の党の政治家は、男性たちはヒゲをはやし、髪も伸びきったままで手編みのセーターを着て、オーバーオールを履き、まるでヒッピーさながら。私のイメージする政治家からはほど遠いものだったからです。
また、緑の党選出の女性政治家がお祝いの場で、花束のかわりに枯れたモミの枝を渡すシーンも目に焼き付いています。緑の党が誕生してからは、国会では常に環境についての議論がされるようになり、エコの話題を聞かない日はありません。もともとエコロジーを大切にする伝統のあったドイツなので、人々はすぐに自分のこととして考えるようになっていったのです。
今必要か必要でないか考える
日本人からすると、議論などというと大変に聞こえるかもしれませんが、個人個人が日々意識することが大事だと思うのです。普段のお買い物だけでもできることはいっぱいあります。ついつい目新しさとか美味しさ、お得感などに引き寄せられがちですが、環境に負荷をかけないという視点を忘れてはならないと思います。エコバッグはもちろん、地産地消、季節感、パッケージ(このパッケージについては、個包装のおせんべいやクッキーのように、日本では特に過剰すぎるものが多いと常々感じています)……。今必要か必要でないか考える、必要でなければ断る、買わないというのも、大きなエコ活動ではないでしょうか。
余った野菜やベーコンで作る具沢山スープ
さらに、日本は世界的に見てもフードロスのパーセンテージが大きいと言われますよね。ただ、どうしても持て余してしまったり、半端に残ってしまう食材も出てくることでしょう。そんなときのために、食材を使い切るメニューを持っているといいですよね。
私の場合はドイツの具沢山スープ「Eintopf(アイントップフ)」を作ります。余った野菜やベーコンなどをサイコロ状に切って炒め、コンソメで煮込んだスープです。それにバターをたっぷりぬったライ麦パンを添えます。具材がいつも変わるので、このように作ったスープは飽きることなく、いつも美味しくいただけます。
Einfopfの作り方。
EinfopfのEinはひとつ、Topfは鍋。Eintopfとはひとつのお鍋で作る具沢山スープの総称です。基本のEintopf(2人分)の作り方を参考までにご紹介します。
ベーコン30g、玉ねぎ1/2個、人参1/2本、セロリ1/2本を1cm角に切り、鍋に入れてバター少々で炒める。ベーコンから脂が出て、野菜がしんなりしてきたら、水500mlとブイヨンキューブ1/2個、月桂樹の葉1枚を入れて15分ほど煮る。さらに1.5cm角に切ったジャガイモを入れて柔らかくなるまで煮る。塩と胡椒で味を整え、お皿に盛り付けて刻んだパセリを散らす。
家にあるもの、なんでもお好みで入れてください。ベーコンの替わりにチキン、豚肉、ソーセージ。野菜は長ネギ、大根、キノコ類、里芋、アスパラガス、ブロッコリー、インゲンなどなど。ジャガイモの替わりに豆類を入れてもいいですし、私は押し麦を入れるのも好きです。また煮込むためのスープですが、インスタントのブイヨンキューブを使いたくない時、私は昆布だしを入れて作ります。
食材の無駄を減らし、洗い物も少なく、その上栄養満点のEinfopf、ぜひエコレシピとして活躍させてください。
<プロフィール>
門倉多仁亜
1966年兵庫県生まれ。日本人の父とドイツ人の母の元で日本、ドイツ、アメリカで育つ。国際基督教大学卒業後、証券会社の勤務を経てコルドンブルーにてグランティプロムを取得する。
現在は、東京と夫の実家のある鹿児島の2拠点をベースに暮らしており、料理教室を主宰する傍ら、メディアを通してドイツ人のシンプルな暮らしをメディアを通して紹介する。
著者、「タニアのドイツ式心地よい暮らしの整理術」(三笠書房)、ドイツの焼き菓子(SBクリエイティブ)など。
いいことをして、この世界をよくしていこう。~ DOWELL(ドゥーウェル)~
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