先月からスタートした、FANTASTICS from EXILE TRIBEの佐藤大樹さん、堀夏喜さんが、Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう! という活動に取り組む企業や団体を訪問するこちらのコーナー。今回は、堀夏喜さんが「100年前から、SDGs発想。」を掲げ、がいしをはじめ、高度なセラミック技術を活かした製品で環境問題の解決に貢献しているセラミックメーカー、日本ガイシ株式会社を訪ね、製造現場である工場を見学し、その後、経営企画室マネージャーの龍野雅美(たつの・まさよし)さんにお話を伺いました。「100年前から、SDGs発想。」とは、いったいどのようなことなのでしょうか。
陶磁器メーカーが、がいしづくりに挑戦
堀さん: 日本ガイシさんは、昨年で100周年を迎えられたそうですが、まず、どのような事業をされているのか、教えてください。
龍野さん: 社名になっている「がいし」を中心とした、セラミック製品を製造しています。弊社は、1919年にがいしという電力機器の製造からスタートしました。がいしと言われてもご存じない方が多いと思いますが、電柱の上で電線を支えている白いものや、鉄塔についている白いそろばんの玉のようなものをごらんになったことはないでしょうか。あれががいしです。がいしは、電力を安全かつ安定的に届けるために、重要な役割を担っているんです。SDGsのゴールでいうと、「7(エネルギーをみんなに そしてクリーンに)」に貢献しているセラミック製品ですね。
DOWELL編集部: 100年も前から、私たちのライフラインを支えるものを作られていたんですね。
龍野さん: 実は、弊社の前身は、日本陶器合名会社という食器メーカーで、現在のノリタケカンパニーリミテドです。100年ほど前、日本では急速に電気が普及していましたが、高い電圧に耐えられるがいしは輸入品に頼っていました。そこで現在の東芝の技術者の方が、陶磁器を作っている日本陶器に相談に来られたことががいしの製造を始めたきっかけです。
DOWELL編集部: 食器メーカーに依頼が来たんですね。確かに陶磁器はセラミックスの一種ですが……。
龍野さん:でも開発を始めると、がいしは高圧電流や厳しい雨風に耐えなければならず、そのためには途方に暮れるような高度な技術が必要なことが分かってきたんです。当初、社内に電気技術者がいなかったこともあって、当時は「食器メーカーの自分たちがこんなに難しいがいし製造に挑戦することに、意味があるのだろうか?」と疑問視する声も少なくなかったと伝わっています。
DOWELL編集部: 確かに、いったいなぜ自分たちに相談があったのだろう、と思うかもしれませんね。
龍野さん: 最終的にチャレンジしようという判断を下したのは、当時の社長の大倉和親(おおくら・かずちか)です。大倉は「営利ではなく、国家への奉仕としてやらねばならぬ」と決意し、国の発展のためにがいし製造に乗り出しました。そして1919年に日本陶器のがいし部門が分離独立して弊社が誕生したのです。
100周年の昨年、理念を見直し、私たちの使命を「社会に新しい価値を そして、幸せを」としました。社会の役に立つものを新しく生み出して、社会に貢献していこうという信念は、100年前から変わらないと思っています。
SDGsは意識せずに取り組んできたこと
堀さん: 「100年前から、SDGs発想。」という言葉も掲げられていますが、どんなことをきかっけにSDGsを意識されるようになったんですか?
龍野さん: 実は弊社の社員は、SDGsのことはそんなに意識していないんですよ。もともと、自分たちは環境貢献企業であると思っているので、そのような製品を作ることが仕事であり、存在意義なんです。例えば先ほど、堀さんを工場へご案内したときに見ていただいた自動車の排ガスをクリーンにするセラミック製の部品もその1つです。1970年頃、自動車の排ガスによる大気汚染が世界中で問題になりました。弊社はその課題に応えるためにあのセラミック部品を開発し、自動車排ガスによる大気汚染は改善されたんです。今では世界中の車に弊社製品が使われており、地球環境保全と省エネルギーの実現に貢献しています。
このように、大事な役割を果たしている製品が弊社には数多くあります。ですから私たちはSDGsの項目を見たとき、「これはずっと自分たちが取り組んできたことだな」と特に構えることもなく、自然に受け入れることができました。
堀さん: そうなんですね。あの自動車排ガス浄化用部品も、すごい技術ですよね。クリーンな自動車を作るために重要な部品が、こちらの工場で製造されていたなんて、思いもよらなかったです。びっくりしました。
龍野さん: そこが、われわれの材料技術と加工技術なんです。もうひとつの特徴が、弊社は世界のオンリーワン製品、ナンバーワン製品をたくさん持っている、ということですね。
DOWELL編集部: SDGsの達成に貢献している製品は、ほかにもあるんですか?
龍野さん: 代表的なところでは、弊社が世界で初めて実用化したメガワット級の電力貯蔵システムであるNAS電池ですね。大容量、高エネルギー密度、長寿命が特長で、長時間にわたる、高出力の電力供給を可能にしました。これも、弊社独自の高度なセラミック技術が生かされています。
DOWELL編集部: それだけの蓄電ができるのであれば、再生可能エネルギーの普及にも役立ちそうですね。
龍野さん: その通りです。風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーは、発電量が天候などに左右されるために出力が不安定になりがちな点が課題ですが、生産した電気をいったんNAS電池に蓄電して、そこから放電すれば、安定した出力を確保できます。そうすれば、再生可能エネルギーの普及はさらに進むのではないかと思います。
ほかにも、セラミックを使った浄水用のフィルターや低レベル放射性廃棄物の焼却炉など、地球環境に優しい製品をたくさん作っています。スマートウォッチのようなIoTデバイスに使う小型のチップ電池も、環境負荷を少なくしながら、世の中の科学技術の発展に寄与していると言えると思います。
DOWELL magazine公式SNSでは毎週火曜日に『FANTASTICS from EXILE TRIBE 佐藤大樹さん・堀夏喜さん連載企画』を発信中!
いいことをして、この世界をよくしていこう。~ DOWELL(ドゥーウェル)~
www.dowellmag.com