DOWELL編集部: 100年も前から、私たちのライフラインを支えるものを作られていたんですね。
龍野さん: 実は、弊社の前身は、日本陶器合名会社という食器メーカーで、現在のノリタケカンパニーリミテドです。100年ほど前、日本では急速に電気が普及していましたが、高い電圧に耐えられるがいしは輸入品に頼っていました。そこで現在の東芝の技術者の方が、陶磁器を作っている日本陶器に相談に来られたことががいしの製造を始めたきっかけです。
DOWELL編集部: 食器メーカーに依頼が来たんですね。確かに陶磁器はセラミックスの一種ですが……。
龍野さん:でも開発を始めると、がいしは高圧電流や厳しい雨風に耐えなければならず、そのためには途方に暮れるような高度な技術が必要なことが分かってきたんです。当初、社内に電気技術者がいなかったこともあって、当時は「食器メーカーの自分たちがこんなに難しいがいし製造に挑戦することに、意味があるのだろうか?」と疑問視する声も少なくなかったと伝わっています。
DOWELL編集部: 確かに、いったいなぜ自分たちに相談があったのだろう、と思うかもしれませんね。
龍野さん: 最終的にチャレンジしようという判断を下したのは、当時の社長の大倉和親(おおくら・かずちか)です。大倉は「営利ではなく、国家への奉仕としてやらねばならぬ」と決意し、国の発展のためにがいし製造に乗り出しました。そして1919年に日本陶器のがいし部門が分離独立して弊社が誕生したのです。
100周年の昨年、理念を見直し、私たちの使命を「社会に新しい価値を そして、幸せを」としました。社会の役に立つものを新しく生み出して、社会に貢献していこうという信念は、100年前から変わらないと思っています。