17歳でニューヨークコレクションにデビュー。以降、世界の第一線でトップモデルとして活躍されてきた冨永愛さん。現在ではモデル・女優のほか、テレビやラジオ、イベントのパーソナリティなどさまざまな分野で活躍。さらに、社会貢献活動や日本の伝統文化を国内外に伝える活動にも取り組まれています。そして2019年には消費者庁からの要請を受け、『エシカルライフスタイルSDGsアンバサダー』に就任。そこで今回は、ご自身が啓蒙を進めている “エシカルライフ” への思いについて、お話を伺いました。
高身長を生かせる仕事を目指してモデルに
DOWELL編集部: 17歳でニューヨークデビューした後、世界のトップモデルとして活躍されてきた冨永さんですが、ファッションモデルになったきっかけについて教えてください。
冨永さん: 子どものころから背の高さにコンプレックスを感じていました。でもいつしか「この高身長を生かすことはできないだろうか?」と考えるようになりました。すると、数歳上の姉がいろいろと調べてくれて、モデルという職業が存在することを知ったんです。そして15歳の時に雑誌の読者モデルに応募したことで、モデルへの道が拓けました。姉には本当に感謝ですね。
DOWELL編集部: 最初は国内で活動されていたんですね。
冨永さん: そうです。日本でお仕事をしていましたが、周囲の方々からのアドバイスや勧めもあって海外も視野に入れるようになり、17歳の時に渡米して、ニューヨークに行きました。海外のコレクションでデビューするには、現地の事務所と契約していることが前提条件となりますが、そのハードルもクリアできて、デビューを果たせたんです。
初めてのランウェイは今でもよく覚えています。ニューヨークの会場の大きさと観客の多さは、当時の私には想像できないくらいのスケールでびっくりしました。ランウェイのトップに立った時には武者震いのように全身に鳥肌が立ち、自分が生きていく場所を見つけたような感覚でした。
DOWELL編集部: さすがです。ちなみにこの年は『VOGUE JAPAN』に掲載された制服姿の写真でも注目されましたよね? 確か、ルーズソックスを履かれていた記憶があります。
冨永さん: あの写真のおかげで海外のファッション関係の方々からも興味を持っていただき、活動範囲が広がりました。撮影してくださったのは、当時よくお仕事をご一緒していた写真家のレイモンド・メイヤーさんです。
日本の女子高生のファッションは独特で、ある意味時代を反映しているところもあったので、彼は興味を持っていたようです。この写真は、実は撮影の当日、私が学校から自前の制服姿で仕事に直行したら、「そのまま撮影しよう」ということになって、撮ったものなんです。ノーメークで撮影したんですよ(笑)。
子どもを授かりエシカルな活動に関心を持つ
DOWELL編集部: トップモデルのお仕事をされていた冨永さんが、どのような経緯でエシカルな活動に関心を持たれたのですか?
冨永さん: 2005年に子どもを授かったことが大きいですね。正直それまでは、環境などにあまり関心なく生きてきました。子どもという、次世代を担っていく存在が身近にできた時、この子たちが生きていく未来のことをちゃんと考えないといけないと目覚めたんです。
DOWELL編集部: ひと口にエシカルな活動といっても幅広いですが、まず初めに取り組んだのはどんな分野だったのでしょう。
冨永さん: “食”です。食べものは、子どもや私の体を構成するものですから、何よりも大切だと意識しました。農薬、オーガニック――さまざまなものと向き合い勉強をしていくなかで、食材や食品に関して、“安心・安全”であることを、最優先に心がけるようになりましたね。
さらに洗剤ひとつ買う際にも、成分はもちろん、商品がどのような環境で作られているのか、その背景まで意識するようになりましたね。サステナブルな活動に取り組んでいる企業の商品を買うことで、応援することができますから。
DOWELL編集部: 私たちはそうしたアクションを“消費による投資”と呼んでいるのですが、こうした表現をどのように思われますか?
冨永さん: 大いに共感できる部分があります。一般の方々の意識が上がって、こうした消費が盛んになるためには、企業活動がもっと透明化されることが不可欠ですよね。自分たちの払ったお金がどのように使われて、どのような形で寄与しているのかが見えることが大切だと思います。
『エシカルライフスタイルSDGsアンバサダー』に就任
DOWELL編集部: これまでエシカルやサステナブルな活動について、さまざまなアクションをされていますが、昨年初めに消費者庁から『エシカルライフスタイルSDGsアンバサダー』のオファーがきた時には、どのように思われましたか?
冨永さん: たいへん光栄なことだと思うと同時に、難しいなとも感じました。私は、ファッション業界にいて、服の販売促進に携わっている立場の人間です。そんな私が、エシカルに関して発信していっていいのだろうかと、だいぶ考えました。でも、こうしたビジネスに関わっている立場でお話をしていくことにも意味があると考え、「エシカルな消費の普及に貢献できるなら、ぜひ広告塔として使っていただきたい」とお引き受けすることにしたんです。
DOWELL編集部: 具体的にはどのような活動をされているのですか? 特に印象に残っていることがあれば教えてください。
冨永さん: 日本各地を訪問して広報活動を行っているんですが、私も勉強になったのが、昨年11月に最終審査が行われた『Green Blue Education Forumコンクール』ですね。コンセプトは、未来の地球と日本を担う次世代層が「未来に守り、残したい自然や環境(緑・土・水)、創っていきたい未来」について考えるというものです。
12歳以下の小学生、18歳以下の中学・高校生、18歳以上25歳以下の学生という世代ごとに、想いや考えを短い動画作品にしてエントリーするコンクールです。そして私は、アンバサダーとして、その作品の審査に参加させていただいたんです。
率直な感想としては、「子どもって、とても柔軟な発想ができるんだな。私たち大人の頭って固いなあ」と(苦笑)。もちろん今の若い世代や子どもたちは、自分たちとは違い、早いうちからエシカルやサステナビリティについて意識してきたというのはあると思いますが、素晴らしいアイデアを思いつくんだなと感心してしまいました。
DOWELL編集部: 冨永さんが気になった動画があれば、お聞きしたいです。
冨永さん: どれも素晴らしかったですが、とりわけ記憶に残った作品を2つご紹介しましょう。
まず、最も年長のグループで女子大生による「わさびアンバサダーチーム」。わさび農家の取材を通して、本わさび栽培を取り巻く厳しい環境をレポートし、その存続の大切さを訴えるという内容です。
もうひとつは「タピる2.0」という高校生グループが手がけたものです。都心でのタピオカドリンクの容器のポイ捨てが、とても環境に負担をかけていることを取り上げていました。単なる報告にとどまらず、専用のゴミ箱の設置や捨て方、ポイント制を導入して利用を促進させるなどの細やかな提案もあり、ぜひ実現してほしいと思いましたね。
国内でサステナブルな活動に取り組んでいる冨永愛さん。後編では、世界、そしてファッション業界の視点から、エシカル、そしてサステナビリティを語っていただきます。
<プロフィール>
冨永愛(とみなが・あい)
17歳で、ニューヨーク・コレクションにデビュー。以降、トップモデルとしての活躍に加え、ドラマやイベントなどへの出演多数。環境や社会問題にも関心が高く、2011年には公益社団法人「ジョイセフ」のアンバサダーに就任。さらに2019年から消費者庁の「エシカルライフスタイルSDGsアンバサダー」も務めている。近著に、自分のリアルな「美のマイルール」を公開した「冨永愛 美の法則」(ダイヤモンド社)がある。
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