中平さん: 鋭いご指摘ですね! 確かにコーヒー業界には“From seed to cup”、つまり“種からカップまで”というスローガンがあります。これは「作物として植える時点からちゃんとした管理体制がないと、おいしいコーヒーにはならない」という意味です。
でも、堀さんが言われたように、私たち常にお客様の視点に立って考え、お客様の笑顔を最優先に行動することを使命とする会社だからです。
それを実現するためには、コーヒー輸入の過程だけでなく、流通や栽培環境にもこだわり、いい豆を育てる必要があります。このように考えて“カップから農園まで”を追求していったら、意識や取り組みがどんどん産地の方にさかのぼっていって、最後には自分たちで農園を持つというところにまでいたったんですよ。
堀さん: なるほど!”お客様のために”よりよい製品を作り、よりよいコーヒー豆を育てる必要がある。それが“カップから農園まで”という意味なんですね。さっきお聞きした“Good Coffee Smileの実現”ということとつながるようなお話だと思います。
中平さん: そうですね。もしよりよいコーヒー豆を作ることを目標に事業を始めていたら、スペシャルなコーヒーを究めることはできても、缶コーヒーのような、身近にコーヒーの楽しさを感じられる製品の開発は今のように多岐にわたることはなかったかもしれませんね。
堀さん: ところで、さっきいただいた名刺に「環境保護のため抽出後コーヒーと麻袋の再生紙を使用しています」と書かれていました。これもとてもサステナブルな活動だと思うんですが、この名刺のように、僕たちが身近に感じられるような取り組みは、ほかにもあるんですか?
中平さん: もちろんです。現在、レジ袋の有料化などを通じたプラスチックの削減が注目されていますが、UCCグループでは、今から10年以上前の2006年に、コーヒーのパッケージとして、業界で初めて、トウモロコシのでんぷんを原料にしたバイオマスプラスチックを採用しています。この施策には「身近なところから生活者の視点で環境配慮を考えてほしい」という、当時の製品開発者の願いが込められているんです。
また、缶コーヒーやペットボトル飲料を作る飲料工場では、製造過程でコーヒーの抽出かすが出ます。一見ゴミに思える抽出かすですが、お気づきのように、これを活用しているのが私たちの名刺です。この取り組みを始めたのは90年代後半ですが、当時、名刺用紙としてリサイクルペーパーを使用する企業が増えていました。そこで私たちも、UCCらしさを表現できる素材を使うべきではないかということになり着目したのが「抽出後コーヒーと麻袋」です。そして試行錯誤を繰り返すこと約1年で、現在の名刺用紙の完成に至りました。
関根さん: ちなみに抽出かすは、2010年からは工場のボイラーの燃料としても活用しています。抽出かすは私たちにとって廃棄物ではなく、貴重な資源のひとつになっています。