サッカーで子どもたちの心に橋を架ける(後編)/ガンバ大阪監督 宮本恒靖さん 【Cover Story】これからの時代の課題解決とは?
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サッカーで子どもたちの心に橋を架ける(後編)/ガンバ大阪監督 宮本恒靖さん

Jリーグ・ガンバ大阪の中心選手として活躍、日韓大会とドイツ大会の二度のワールドカップではチームをけん引してきた宮本恒靖(みやもと・つねやす)さん。現在、ガンバ大阪の監督としてチームを率いながら、2013年から続けている、東欧のボスニア・ヘルツェゴビナでの『マリモスト』というスポーツアカデミーの活動にも携わっています。前編では、宮本さんのボスニア・ヘルツェゴビナとの関わりや、アカデミー設立の経緯などを紹介しました。後編では、宮本さんが考える “スポーツが持つ力”、そして今後の活動についてお話を伺っていきます。

(文責/DOWELL編集部・とがみ淳志)

観る者も観られる者も動かす、“スポーツが持つ力”

開校から4年。『マリモスト』によって民族融和は進んだのか、とても気になるところです。

「子どもたちはピッチに出ると民族が違うとか関係なく、一心不乱でボールを追いかけていきます。日常ではあまり関わることのない他民族の子とともにゴールを目指し、ディフェンスをする。『ふだん会わない子と、ボールを蹴れて楽しかった』というコメントが出てくるのは嬉しいですね。送迎で来校するそれぞれの保護者の間にも徐々に会話が生まれつつあるのも、よい傾向だと思います」

©Little Bridge Japan

“スポーツが持つ力”を信じて、課題の解決に取り組んでいる宮本さん。これまでの人生で、“スポーツが持つ力”を実感した場面を尋ねてみました。

「17歳の頃にイギリスに遠征したのですが、現地で散歩をしている時に、5歳ぐらいの子どもたちと出会ったんです。『一緒にボール蹴ろうか』みたいな雰囲気になってボール回しをしたんですけど、とても温かな気持ちになれたんですよ。言葉を交わさなくても、たった1個のボールを通じて友達になれた。サッカーって、スポーツってすごいなあと思いました」

さらに、人々をプレーで魅了してきたプロアスリートの立場からも。

「オリンピックや世界選手権などで観られるトップクラスのプレーは、熱狂を生み出し、興奮をもたらしますよね。ワールドカップ日韓大会で日本中に生まれた一体感には、ピッチの上で感動していました」

今年はコロナ禍で、無観客試合からスタートしたJリーグ。取材時には上限5000人が認められ、まばらですが、スタンドには応援する人々の姿もありました。

「ゼロから5000人になっただけでも、選手の表情やパフォーマンスがまったく変わりましたね。観られているという緊張感が明らかに作用しているんです。選手はお客様によいプレーをお見せしたいと思っています。そしてお客様は、必死にがんばる彼らの姿から勇気と感動をもらっていただきたい」

そして、「満席状態のスタジアムに戻る日が待ち遠しいですね」と付け加えました。

大切なのは、さまざまな活動を知ってもらうこと

無限の可能性を感じる“スポーツが持つ力”ですが、現実には厳しい局面も多いのも事実です。『マリモスト』のスキームが、他の紛争地域でも適用できるのではと、つい安易に考えてしまいがちですが、

「それは簡単な話ではないと思いますね。もちろん地域によってさまざまな事情が異なるので、カスタマイズしていく必要があります。また、いちばん大きいのは経済的な問題です。『マリモスト』についても、最終的には現地の人々が運営をしていく形にしていかないと成功したとは言えないと思います。現地の人たちが自立して活動を継続していくことが目的ですから。課題はたくさんありますが、その日が来ることを信じてがんばり、よき前例としたいですね」

ただ厳しさばかりでなく、光明もあります。『マリモスト』を支えるために、自身が発起人となりNPO法人『Little Bridge』も設立した宮本さん。発案から運営にいたるまでの一連の活動が評価され、2017年の『HEROs AWARD 2017』で、大賞的な位置づけである『HEROs OF THE YEAR』を受賞しています。

©Little Bridge Japan

ちなみにこの賞は、スポーツの力を活用して社会貢献やソーシャルイノベーションを起こそうとしているアスリートやチーム、団体を表彰するというもの。元サッカー日本代表の中田英寿氏が起案し、2017年に公益財団法人である日本財団によって創設されました。そう、宮本さんは、その初年度で表彰されたのです。

「大変光栄に思うのと同時に、アスリートには発信力があることをあらためて実感できました。壇上に多くの方が上がられましたが、そこでは、『この方がこんな活動をしているんだ』ということに、私自身が気づくこともできました。賞をいただくことよりも、私たちアスリートが行っている活動を世界に知ってもらうということにこそ、大きな意味があると思います」

確かに、自分たちの活動を世界に知ってもらうというのは、とても大切なことです。これまで『マリモスト』の年間活動費は、基本的には日本からの支援で賄ってきたそうですが、それでは日々の活動費は何とか捻出できても、今後必要になってくる施設の改修などには対応できなくなってしまうという現実もあります。今後は日本だけでなく、ヨーロッパでのファンドレイジング活動も充実させていくことを検討しているそうですが、そのためには、『マリモスト』の活動を広く世界に知ってもらうことが不可欠なのです。

©Little Bridge Japan

最後にDOWELL magazineの読者にメッセージをいただくことに。

「ボスニア・ヘルツェゴビナは遠い国ですが、こうしたプロジェクトの活動を通じて、この国の抱える課題がいかに多いか、知っていただきたいです。ひとりでも多くの方に身近に感じてもらい、応援していただけると励みになりますね」

ちなみに『Little Bridge』は、2017年に『マリモスト』の子どもたちを日本へ招き、翌年には日本の子どもたちが現地を訪ねるスタディツアーを催行するなど、日本とボスニア・ヘルツェゴビナとの交流にも注力しています。こうした活動の様子は『Little Bridge』サイト(※)で見ることができ、また寄付などのアクションも可能です。ぜひ一度、ごらんになってみてはいかがでしょうか。

そこに、課題多きこれからの時代で「Do well by doing good. 活動」を実践していくヒントが見つかるかもしれません。

※NPO法人『Little Bridge』

https://www.little-bridge.net/

(前編)を読む>>>

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