「衣装デザインをメインに手がけていた頃の私は、着る人が喜んでくれる衣装や、自分が作りたい服を創作することが仕事のゴールでした。でも、芸能活動の節目の年に自分がやるべきことを考えたとき、“社会”に目を向けたものづくりに挑戦したいと思ったんです」
社会の課題と向き合うと決めた背景には、「余剰生地」の問題がありました。
それは篠原さんがこれまで服飾に関わってきた中で、どうしても気になっていたことでした。
「衣装の仕事を始めたときに、まず驚いたのが廃棄される布の多さでした。華やかな衣装の世界は、よりよいステージを作り出すためにサンプルや予備も必要で、制作途中でデザインや素材が変更になることも多々あります。買い付けなどで立ち寄る生地の仕入れ先の方からも、いつも余り布の話を聞いていました」
襟ぐりや袖のカーブに合わせて布をカットしていく裁断のプロセスにおいても、余り布が出てしまいます。実際に服を作るときに使う布は全体の70%くらい。残りの30%は使い道がなく、廃棄するしかありません。
「余った布で一緒に作品を作りませんか?」という篠原さんの提案に、仕事でお付き合いのあった舞台生地の加工・卸をされている「ogawamine LAB」(※)の方が賛同。展覧会に向けた創作活動が始動しました。
「ファッション業界全体がサステナブルな方向に進む中、衣装の世界でもその取り組みに向き合っていく必要があると感じました。生地の余剰を少なくするには、服に合わせて布を使うのではなく“布に合わせて作る服”があってもいいはず! という発想から私の挑戦がスタートしたのです」
(※)ogawamine LAB https://ogawaminelab.com