堀さん: まさにサステナブルなお話ですね! ところで、こめ油以外にも医薬品原料や化粧品、油脂化学製品、お菓子など、いろいろな分野で、米ぬかやお米を使った事業を展開されているそうですが、医薬品事業には、半世紀も前から取り組まれていたとうかがいました。お米と医薬品という組み合わせが、僕にとってはとても意外です。
築野さん: 医薬品製造を始めたのは昭和40年代ですね。きっかけはドイツの大手試薬メーカーや、国内外のドリンクメーカー各社から声をかけられたことです。「ビタミンB群のイノシトールという成分が大量に必要なのだが、米に含まれているそうですね。供給できるのなら、いくらでも購入を検討しますよ。ぜひ作ってほしいですね」と依頼されたんですよ。人々の健康に役立てるならと必死で取り組みました。
堀さん: 海外から直々に声がかかるなんてすごいですね!
築野さん: イノシトールは頼まれて開発したものですが、既存の製品を海外の会社が見つけてくれたケースもあります。例えば米ぬかから抽出したフェルラ酸。これは実は、バニリンの原料になるんです。
バニリンというのはバニラの香りがする物質のことで、通常はバニラビーンズから抽出します。でもそれだけだと需要に追いつかないので化学的に合成もするのですが、それよりも天然の方が体にいいとの評価でした。
それで、ヨーロッパで天然のバニリン抽出に取り組んでいる業界トップの方が私たちのフェルラ酸のことを知って、この和歌山まで足を運んでくださったんです。今では、日本の築野食品のフェルラ酸から作るバニリンは天然由来とヨーロッパで認められていて、有名なチョコレートなどの香料の原料に使われているんですよ。
堀さん: すごい! お米が意外な形で世界を舞台に活躍しているんですね!