米ぬかを徹底的に活用して、健康や環境保護に貢献する(後編)/築野食品工業 築野富美さん
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米ぬかを徹底的に活用して、健康や環境保護に貢献する(後編)/築野食品工業 築野富美さん

FANTASTICS from EXILE TRIBEの佐藤大樹さん、堀夏喜さんが、「Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう!」という活動に取り組む企業や団体を訪問するこちらのコーナー。今回訪れたのは、和歌山県の紀ノ川沿いにある「築野食品工業株式会社(以下、築野食品)」。昔は廃棄されることもあった米ぬかを活用して、「こめ油」をはじめ、医薬品原料や化粧品、油脂化学製品、そしてお菓子まで製造しています、また、工場や生産ラインなどにおいても環境への配慮を徹底し、さらに地域貢献にも注力している企業です。

前編では築野食品がこめ油の開発にいたった経緯などを紹介しましたが、後編では、築野食品の国際的な取り組みや地域活動について、前編に引き続き、堀夏喜さんが代表取締役社長の築野富美(つの・ふみ)さんにお話をうかがっていきます。

国内外で環境保護などにつながる取り組みも

築野さん: 先に、私たちの活動が海外から注目されてきたというお話をしましたが、実は、私たちから世界へ発信してきたこともあります。

堀さん: 世界へ発信とは、すごいチャレンジですね! どのようなことをされたのですか?

築野さん: 1998年のことですが、会社の創立50周年を記念して、京都で『米に含まれる生理活性物質による疾病予防』をテーマに、初めて国際シンポジウムを開催しました。お米の持っている価値を世界で理解してもらいたいという強い想いからやってみたんですよ。すばらしい先生方とのめぐり逢いによって、シンポジウムの組織委員会がつくられ、多くの国内外の著名な先生方にお世話になることができました。

うまくいくか正直不安はありましたが、おかげさまで17カ国500名以上の方に参加いただいて、国内外から高い評価を受けることができました。また、日本の若い研究者が発表する機会も設けたことで、彼らが世界の第一人者の方々と交流することもできました。「これから研究を続けていく中で大いに励みになった」という、嬉しい言葉も聞いています。

その後も国際シンポジウムは10年ごとに開催していますが、2018年の第3回では、視野を広げた内容にしてくださいました。私たちが、米の生産や消費に関わる世界の国々・地域をつなぐ架け橋となり、米の有効利用や研究活動を活性化することで、経済や環境の改善、人々の健康を実現することを目的にしたのです。組織委員の先生方のお力で、盛況のうちに終えることができました。

堀さん: お米が経済や環境の改善にまで貢献できるとは! 世界の抱えるさまざまな問題をお米で解決していこうということですね。

築野さん: はい。まずはアジアやアフリカなどで「もっとお米を有効に使おう、そのためにもっと勉強をしたい!」という人が増えてくれるといいなと思っています。

そしてゆくゆくは、私たちが育んできた技術を活用して、貧困地域での雇用創出や、環境の改善や保護、浄水、さらに子どもたちの教育の充実なども実現して、明るい未来を築いていきたいですね。

堀さん: すでに国内では環境に配慮したアクションは数多くなされていますよね。このお話をうかがう前に、工場を見学させていただきましたが、そのエネルギーも工夫されているとか。

築野さん: はい。築野食品グループの製品はすべて、米ぬかとカーボンニュートラルな原料から作られています。工場の燃料も、生産工程で発生する産業廃棄物になってしまいそうな産物を最大限に活用しているんです。また製造ラインも細かく分けて検証して、廃棄物を出さない、いわゆる“ゼロエミッション”を目指しています。

ちなみに使用済みの食用油や非食用油は石鹸、ペンキ、インクや潤滑剤といったオレオケミカル(※注)製品の原料としても有効利用していて、リサイクル事業にも貢献しているんですよ。

(※注)主に植物性油脂を活用する化学

地域に貢献し、町とともに発展していきたい

堀さん: 築野食品さんは、会社発祥の地であるかつらぎ町とともにある会社だとうかがっています。今、僕たちがお話をしているのは研究施設ですけれど、元々は県立高校だったのを改築して、利用されているんですよね。黒板などがあって、とても懐かしい感じです。

築野さん: この町にあった紀の川高等学校が閉校することになって、その跡地に町が地域産業の振興や雇用につながる事業を誘致しようと、民間からの提案を公募しました。そこで、日本が米の研究でトップクラスであることを、この高校をベースにして発信しようと思い立ち、活用させていただくことになったんです。

2019年末、できるだけ高校の建物を利用する形で研究開発拠点を設立して、現在、『TSUNO innovation & welfare center (以下TIWセンター)』と名付けて運営をしています。米ぬかの研究はもちろんですが、町の抱えるさまざまな課題の解決にも取り組んでいきたいと考えているんですよ。

堀さん: 本当に“町ぐるみ”ですね。具体的にはどのような活動をされているのですか?

築野さん: かつらぎ町は“健康寿命日本一宣言”を唱えています。私たちは、TIWセンターを通じて、米ぬかが身近で体にいい製品であることをさまざまな研究データとともに発信することで、地域の人々の健康意識を高め、健康長寿の達成を目指しています。

あとやはり大きいのは雇用ですね。新規事業で地元の雇用を創出するのはもちろん、町の人口減少に歯止めをかける転入人口の増加にも寄与しています。実際この20年で、米への愛情や米ぬかを活用する事業への興味から、北海道から九州まで、和歌山に無縁な人たちが入社を希望されるケースが増えているんです。

堀さん: 皆さん、とても楽しそうにお仕事されていますよね。特に働き方などで意識されていることはありますか?

築野さん: 自主性を大切にしていることでしょうか。何かやりたいと社員に相談されたときは、絶対否定してこなかったと思います。それは年齢や社歴を問わず、です。これまでも「ロシアの展示会に出てみたい」「行っておいで!」、「グルテンフリーに挑戦したい」「やってみて!」という感じです。頭ごなしに否定はしません。

堀さん: 素晴らしい! それは皆さん、やる気になりますよね。製品も、そこで働く人にとっても、サステナブルな会社だと思います。では最後の質問です。『DOWELL magazine』が提唱している「Do well by doing good. 活動」は、「いいことをして世界と社会をよくしていこう」という活動のことです。築野社長が個人として実践されている「Do well by doing good. 活動」があれば、教えてください。

築野さん: 会社の活動と重なる部分はあるんですが、やはり生まれ育ったこの町に役立つ活動ですね。資材部の築野敦子(つの・あつこ)と経営企画部の築野靖子(つの・やすこ)は私の娘たちなんですが、実は私、彼女たちを産みっぱなしで、あまり育児に手をかけることができなかったんですよ。でも、地域の人たちに娘を育ててもらうことで、私は働くことに専念できました。

女性というのは、出産や子育てなどでハンディがあるように見えるけれど、自分ができることを一生懸命やっていたら、周りの人々が手伝ったり、助けてくれたりするんです。それが地域社会というものだと思います。

堀さん: 皆で支え合うコミュニティの大切さが伝わってくるお話ですね。

築野さん: 近所のおばちゃん、おばあちゃん、おじいちゃんが総出で私を支えてくださったので、これからも一生懸命に、地域の人たちのお役に立ちたいと思っています。高齢者のケア以外にも、子どもたちには本を読んでね!と、図書券をプレゼントしたり、みなさんが笑顔になれるように、芋ほり大会、クリスマスイルミネーションの設置……。会社も私も、この町と一緒に発展していきたいと考えています。

(前編)を読む>>>

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