(第11話)春の息吹を感じる季節に ビスコッティのレシピ/門倉多仁亜 【連載】あなたの「おいしい」が、だれかの「うれしい」に
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(第11話)春の息吹を感じる季節に ビスコッティのレシピ/門倉多仁亜

最近、日本でも「イースター」という言葉を聞くようになりました。イースターとはイエス・キリストの復活をお祝いする祝祭。キリスト教文化圏においては、1年で最も重要な祝日とされています。

しかし、実はイースターとは、キリスト教が広まる前から北ヨーロッパにあった土着の宗教の行事のひとつ、春の訪れを讃えるお祭りに由来しているのです。長い冬が終わりをむかえ、春になると、地面を覆っていた雪が溶けて、土中に眠っていた球根が芽吹き始め、一面に花を咲かせます。辛く長い冬を乗り越えて、地球の生命力が見えるように、感じられるようになる季節です。

まだキリスト教を知らない当時の人々も自然のエネルギーに感動し、賛美していたのでしょう。”イースター”の語源は”夜明け”。その名の通り、イースターのある春とは”夜明け”であり、再スタートの季節です。

イースターのゲーム

そんなイースターのシンボルといえば、うさぎや卵、そしてひよこ。うさぎは多産の象徴であり、卵は生命のシンボル。この不思議な組み合わせが、なぜか「うさぎが卵を産み、ひよこが生まれる」。そんなおとぎ話みたいな夢あるストーリーをイメージさせることになったのです。

イースターのお祝いの仕方は国や地域によってさまざまですが、わたしはイースターエッグやお菓子を探すゲームが大好きでした。その遊び方を簡単にご紹介します。

イースターエッグの準備

イースターの数日前から準備を開始。家族揃ってゆで卵に飾り付けをします。

一番シンプルなやり方は、卵を茹でるときに、乾いた玉ねぎの皮を一緒に入れる方法です。そうすることによって卵の殻が淡い黄色に染まります。紫キャベツやビーツなど、ほかにも使える原料はいろいろありますが、しっかり色を付けたい場合は、染料に酢を少し入れると色が殻に定着しやすくなります。最近は自然素材の染料やマーカーも市販されているので、それで卵にカラフルな絵を描いてもいいでしょう。

準備ができたらイースター・サンデーの前夜に、イースターエッグをカゴに入れて、家の玄関においておくのです。そうすると寝ている間にイースターバニーが家に来てくれて、私たちが飾り付けをした卵とイースターにちなんだチョコレートやキャンディーを家中に隠してくれます。

イースター・サンデーは、自然といつもよりも早く目が覚めて、枕元に用意しておいたカゴを片手に、キャッキャ声を上げながら、きょうだいそろって家中を走り回り、お菓子を探したものです。すべてのお菓子を見つけていたつもりでも、数日後、植木鉢のグリーンの間に花の形をしたロリーポップキャンディーが刺してあるのを見つけた時には、ラッキー!

こんなにも子供たちをワクワクさせる楽しい遊びがあるのです。

暗く厳しい冬の後には必ず春が訪れる

日本の3月というと、卒業と同時に新生活のシーズンですね。とはいうものの、コロナ禍の今年は、すべての様子がいつもと違います。

この日が来るまで、気持ちが落ち着かない中での受験勉強や、会社の先行きが見えない中での就職活動は大変だったことでしょう。そしてそれだけでなく、この先、暮らしや経済は元に戻るのだろうかという漠然とした不安もあると思います。

でも今回、私がイースターの話を思い出しながら感じたことは、この不安な気持ちは今に始まったことではなく、先人たちも春の前には同じ気持ちになっていたんだろうな〜っていうこと。

そして自然は教えてくれるのです。

暗く厳しい冬の後には必ず春が訪れ、日が少しずつ伸びて、暖かくなっていくのです。木々が芽吹き、空が明るくなれば、私たちの気持ちも前向きになっていきます。自然の巡りとともに実感できる再スタートの季節。冬の間に蓄えてきたエネルギーを秘めて、新たなチャレンジに向かう季節ですね。

イースター・ピクニックで春の息吹を

春の訪れを喜ぶ気持ちは宗教に関係なく、人間誰しもが共感できる原始の感情です。日本の春といえば桜を愛でる季節。お花見もいいですが、今年は子供たちと一緒にイースター・ピクニックで春の息吹を感じるのはどうでしょう。春色のビスコッティを焼いて、イースターエッグと一緒にピクニック先の芝生に隠したりしてみてはどうですか?

ちなみにビスコッティは、コーヒーやアイスクリームと一緒に食べるとさらにおいしくなります。「imperfect表参道」から新発売されるピーチ味のアイスクリームと合わせて、一足先にお口の中に春を感じるのも楽しいですよ!

ビスコッティ

材料(20個くらい)

無塩バター(常温) 60g

バニラ 少々

グラニュー糖 70g

バニラ 少々

塩 少々

卵 1個

薄力粉 130g

ベーキングパウダー 3g

ピスタチオ 50g

ドライクランベリー 50g

作り方

①ピスタチオを鉄板に広げ、150℃に熱したオーブンに入れてローストする。途中で様子  を見ながらかき混ぜ、15分ほどしたらオーブンから出して冷ます(ピスタチオは焼いた方が香ばしくて美味しい)。

②ボウルに常温のバターとグラニュー糖を入れ、白っぽくホワッとなるまでミキサーでよく混ぜ合わせる。

③ボウルにバニラ、塩を混ぜ、溶き卵を2~3回に分けて入れ、その都度よく混ぜる。

④薄力粉とベーキングパウダーは混ぜ合わせて振るっておき、2~3回に分けて生地に混ぜ込む。

⑤ゴムベラにもちかえ、ピスタチオとクランベリーも混ぜる。

⑥鉄板にベーキングペーパーをしき、生地を長細い棒状に伸ばして鉄板に置く。目安の大きさは長さ28cm x 幅6cm x高さ2cm。生地はベタベタするので手を濡らしておくと作業がしやすい。また生地は焼けると広がるので、その分の大きさを考慮する。

⑦180度のオーブンで25分焼く。必要に応じて途中で鉄板を回す。

⑧焼けたらあみに乗せて冷まし、生地を1cm幅に切る。

⑨切り口を上にして鉄板に並べ、150℃で15分焼く。途中で裏返すのを忘れずに。

⑩焼き終えたら、網の上に乗せて冷ましてから缶などに入れて保存する。

<プロフィール>

門倉多仁亜

1966年兵庫県生まれ。日本人の父とドイツ人の母の元で日本、ドイツ、アメリカで育つ。国際基督教大学卒業後、証券会社の勤務を経てコルドンブルーにてグランティプロムを取得する。

現在は、東京と夫の実家のある鹿児島の2拠点をベースに暮らしており、料理教室を主宰する傍ら、メディアを通してドイツ人のシンプルな暮らしをメディアを通して紹介する。

著者、「タニアのドイツ式心地よい暮らしの整理術」(三笠書房)、ドイツの焼き菓子(SBクリエイティブ)など。

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